預金利息や有価証券の運用益は、20.315%の税率で課税されます。
この税についての優遇ということで注目されているのが、NISA(一般NISA/つみたてNISA)とiDeCoです。
NISAとiDeCoの税金についてのアプローチを解説しつつ、どのように活用していくべきかをご紹介していきます。
NISAとiDeCoの比較
両者の比較を以下の表にまとめました。
一般NISA | つみたてNISA | iDeCo | |
(1)年間投資上限 | 120万円 | 40万円 | 14.4万円~81.6万円 (職業などによる) |
(2)購入・拠出時 | 特になし | 特になし | 全額が所得控除 |
(3)運用益 | 非課税 | 非課税 | 非課税 |
(4)運用期間 | 5年 | 20年 | 開始から最長70歳まで |
(5)途中換金 | 可能 | 可能 | 原則、不可 |
(6)運用商品 | 上場株式、株式投資信託 | 金融庁指定の投資信託 | 各金融機関指定の定期預金、 投資信託、保険など |
(7)損益の通算 | 不可 | 不可 | 不可 |
(8)換金時 | 非課税 | 非課税 | 一時金は退職所得、 年金は雑所得(公的年金) として課税 |
節税効果が高いのはiDeCo
節税効果の点では、iDeCoに軍配が上がります。
それは次の取り扱いによるものです。
- 上記(2) 掛金拠出時に全額が所得控除
- 上記(8) 換金時に退職所得または雑所得(公的年金)
掛金拠出時に全額が所得控除
NISAは運用益に課税されないだけですが、iDeCoはそれに加え掛金を拠出した年の税金を減らすことができます。
節税効果は、拠出額のおおむね20%以上と考えて良いでしょう。
たとえば年収600万円くらいの会社員で考えましょう。
拠出額は会社に企業年金がない会社員の拠出額上限、27.6万円/年とします。
このくらいの方ですと所得税の税率は大抵、10%です。
住民税の税率は10%。
従ってiDeCoの掛金を拠出したことで節約できる税額は
- 所得税:27.6万円×10.21%=28,179円(復興税2.1%を含む)
- 住民税:27.6万円×10%=27,600円
合わせて20.21%、金額にして約55,780円 となります。
ご自身の税率(限界税率)の確認方法は、次のページをご参考ください。
自分の税率を確認してみよう~給与所得編~
自分の税率を確認してみよう~確定申告編~
換金時に退職所得または雑所得(公的年金)
60歳を超えいざ受給となった場合でも、少し気をつければ非課税で受け取ることができます。
また非課税とまでいかなくとも税金面での優遇があります。
一時金での受け取りは退職所得
iDeCo年金資産の受給は一時金をおすすめします。
退職所得として扱われ税金面の優遇が大きいからです。
サラリーマンの拠出制限2.3万円/月で20年超、拠出を続けた場合には余程の運用益(拠出期間20年として1.5倍・長くなればそれ以上)が出ない限り、非課税で受け取れます。
ただし一時金の受取と退職との間が5年以上、開いていることが条件です。
年金で受け取った場合
iDeCoを年金で受け取ると公的年金として課税されます。
公的年金は65歳未満なら年70万円、65歳以上なら年120万円までであれば課税されません。
しかし国民年金・厚生年金とiDeCoを同時に受け取って無税で行けるかといえば、少し難しいところです。
受取額で考えてみましょう。
基礎控除38万円もありますので、65歳以上の方が非課税で受け取れる年金の額は
120万円 + 38万円 = 158万円
となります。
いかにも少ないですね。
できれば一時金で受け取って税メリットを最大限、享受しましょう。
欠点は途中で引き出せないこと
iDeCoの欠点は途中で引き出せないことです。
当然といえば当然ですが、その用途は老後資金の貯蓄に限られます。
住宅を買うための貯蓄としては使えません。
とはいえ老後資金を確実に貯蓄しておくことも重要です。
そのためにiDeCoで準備をしておき、自由にしたい資金はNISA、と使い分けましょう。
つみたてNISAは投資初心者向き
NISAのうち、つみたてNISAは以下の理由から投資初心者向きといえるでしょう。
- 非課税期間が長い
- 投資初心者が活用しやすい制度設計
非課税期間が長い
一般NISA5年に対し、つみたてNISAは20年間、非課税での運用ができます。
つまりそれだけ長い期間での運用を考えることができます。
投資初心者が活用しやすい制度設計
積立投資を前提
積立投資のみでの運用となりますので、必然的にコツコツ型の投資になります。
「下がった所を狙う」など難しいことを考える必要があまりないため、投資初心者や運用に神経を使いたくない人向きといえます。
なお一般NISAも積立投資で利用はできます。
対象商品が厳選されている
対象商品が限られることにはなりますが、信託報酬などの面から金融庁がフィルタリングしてくれているため商品を選びやすいというメリットがあります。
投資信託での投資を始めようとして証券会社のページをのぞいてみたら、あまりの種類の多さに目眩がした・・・という方もいるのではないでしょうか。
かくいう私も、新しく投資する商品を探すときに軽く途方にくれることがあります。
そんな中、一定の基準で対象商品を絞り込んでいるつみたてNISAは、初心者にとって投資を始めるハードルを下げてくれるでしょう。
一般NISAは投資経験者向き
一般NISAは、以下の理由から投資経験者向きといえるでしょう。
- 対象商品が多い
- 非課税投資額が大きい
対象商品が多い
つみたてNISAと違い対象商品が広く
- 上場株式
- 株式投資信託
となっているため、自分で選んで投資をしたい人にとって制約が少ないといえます。
欲を言えば、公社債や公社債投信も対象にしてほしいと思いますが。
非課税投資額が大きい
年間の非課税投資枠はつみたてNISA40万円に対し一般NISAは120万円と3倍です。
iDeCo(最大81.6万円)と比べても大きくなっています。
それだけ、大きな元手について非課税メリットを享受することができます。
NISA、iDeCoまとめ
以上をまとめると、
- 節税効果が高いiDeCoで老後資金を準備
- しかしiDeCoは途中で引き出せない
- 自由に使いたい資金の運用としてNISAを活用
- つみたてNISAは投資初心者向き、一般NISAは経験者向き
ということになります。
皆様の資産運用のお役に立てれば幸いです。
関連リンク
iDeCoを税理士目線で解説
一般NISA概要とメリット・デメリット
つみたてNISA概要とメリット・デメリット
一般NISAとつみたてNISA
※投資はご自身の判断でお願いします。損失が生じた場合でも当方は責任を負いかねます。